クレジットカードや消費者金融から多額の借金をした結果、返済のめどが立たず苦しんでいる方がたくさんいます。
友人や恋人の連帯保証債務が、ある日突然降りかかることも珍しくはありません。
自分の能力以上の借金を抱えた結果、止むを得ず「自己破産」を考える人も多いでしょう。
自己破産は、国が認めた借金の最終救済手段です。
借金がどうしても返せなくなった人のために与えられた「人生再出発」の機会なんです。
しかし、自己破産について間違った情報が多く出回っているせいで、正しい知識を身につけないまま「自己破産」を避け、追い詰められてしまう人も少なくありません。
「自己破産すると選挙権がなくなる」「住民票にもその事実が載る」などは、もちろん間違った情報です。
そこでこの記事では、自己破産の基礎知識とメリット、誤解されがちな自己破産のデメリットについて、自己破産経験者の私が解説していきます。
破産すると間違いなく不利益(デメリット)がありますが、
返済に追われることなく、人生をやり直せます。 借金を劇的に解決するには最強の方法です。
正しい知識を身につけ、自己破産で借金問題を解決することがどういうことなのか理解できれば今の借金問題も解決の糸口が見えてくるはずです。
自己破産とは?
自己破産は破産法にのっとって手続きされる債務整理方法の1つです。
第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
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自己破産の目的は、債務不能に陥った債務者の債務(借金)をゼロにすること、債権者のために、債務者の財産を精算することです。
債務整理の中でも最終手段の位置付けです。
裁判所を介して免責が認められれば、債権者が債務者に対して借金の支払いを請求できなくなるため、借金の支払いが免除(債務ゼロ)になります。
自己破産に必要な条件とは?
自己破産を申し立てるときに必要な条件は、「支払不能状態にあること」です。
財産状態が極度に悪化し、借金の返済ができない状態であること。
借金の額が多くなくても、
- 収入が少ない
- 生活保護を受けている
- 病気や怪我で収入を得られない
- 収入や財産を考慮して分割払いにしても 3年から5年で完済できない
等、さまざまな理由から、支払不能と判定されることもあります。
逆に、資産があったり将来的に借金を返せるほどの収入が見込めるなどの場合は、支払不能とは認められません。
自己破産には2通りある
自己破産には、同時破産手続きと管財事件の2パターンあります。
自己破産手続きでは、債務者の持っている財産を売却し、全債権者に公平に配分しなければなりません。
債務者にある程度の財産がある場合、破産手続き開始と同時に裁判所が破産管財人(弁護士)を選任し、財産を調査・換価(お金に変える)・配当(債権者に配分)します。
これを管財事件または、破産管財と呼びます。
管財事件になると、簡単な手続きでも6ヶ月、長いと1年以上かかることもあります。
これに対して、債務者の財産がほとんどない場合は、破産手続き開始と同時に破産管財人は選任されず、手続きを終了します。
これが同時廃止です。
個人破産のほとんどは同時廃止で、免責確定まで大体4ヶ月くらいで終了します。
自己破産のメリット
自己破産する最大のメリットは、裁判所から免責許可を得ることで借金がゼロになることです。
実際は借金がゼロになるわけではなく、債権者が借金の取り立てをできなくなるという手続きです。
借金の支払いに追われていた毎日から解放され、生活の再建を図ることができます。
自己破産のよくある誤解

自己破産をすることで「戸籍に傷がつく…」など、間違った噂が飛び交いそれを信じるあまり、かえって借金が増えるという泥沼にはまってしまうケースもあります。
例えば、多重債務状態ではもうどこも貸してもらえないから、闇金やそれに近い法外な金利を提示する業者にお金を借りてしまうなどです。
しかし、自己破産した私が言うのもなんですが、この制度は借金を支払えなくなった人を救うものです。
救済措置なので不利益はほとんどありません。
ここからは自己破産のよくある誤解を解いていきます。
戸籍や住民票に破産の事実が記載される
破産宣告をしても、戸籍に傷がつくようなことはありえません。
また、住民票にも記載されません。
記載されるのは、本籍地の破産者名簿だけで、この名簿は本人が請求しなければ交付されないものです。
しかも、免責許可決定がおりたら名簿から抹消されます。
選挙権がなくなる
なくなりません。自己破産手続きは選挙権に何の影響もありません。
会社をクビになる
自己破産が原因で会社はその人を解雇することはできません。
破産手続き中、一部の職業(弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・
生命保険募集員、警備業者など)は、職に就けなくなりますが、免責許可が下りれば復権できます。
結婚相手や家族の信用情報にも影響が出る
自己破産はあくまでも破産者本人のことであり、同居家族や結婚相手の信用情報に影響はありません。
賃貸住宅の契約ができなくなる(追い出される)
事故破産を理由に賃貸住宅を追い出される心配はありません。
また、賃貸住宅の契約もできます。
ただし、一定期間は信用情報に破産の事実が載っていますので、保証会社が信販系の物件は審査落ちする可能性が高いです。
破産後は、信販系の保証会社が付いている物件は避けましょう。
携帯電話が解約になる
携帯電話は今や生活の必需品です。
自己破産しても公共料金の支払いと同じとみなされますから、支払いを続けても問題はありませんし、没収もされません。
ただ、未払いや電話機本体の支払いが終わっていない場合は借金とみなされ破産手続きに含める必要があります。
この場合は、強制解約になってしまうので注意しましょう。
破産宣告後に得た財産や給与も差し押さえられる
差し押さえられません。自己破産は生活の再建を図るのが目的です。
破産宣告時までの財産は処分されますが、それ以降に得た財産・給与を
生産して債務に充てることはできません。
海外旅行に行けない・引越しも無理
破産すると引越しや海外旅行へ行けないかといえば、そうではありません。
裁判所に認められたら、引越しも旅行も可能です。
予定がある方は、早い段階から弁護士に相談することをお勧めします。
一生、ローンやクレジットカード審査に通過しない
自己破産すると約7年から10年は信用情報機関に事故情報が残るため、クレジットカードやローン審査に通過できません。
ただ、事故情報が消え、収入も安定していればまたクレジットカードを持つことも可能です。
自己破産のデメリット

自己破産の間違ったデメリットは先述しましたが、ここからは本当のデメリットをご紹介します。
信用情報に傷がつきブラックリスト入り
先ほども少し触れましたが、自己破産に限らず債務整理をすると信用情報機関にその事実が事故情報として登録されます。
いわゆる「ブラックリスト入り」です。詳しいことは↓この記事で書いていますので割愛します。
債務整理後5年から10年、自己破産では7年から10年は、ブラックリスト入りするので、新たな借り入れができなくなります。
ただ、借金を増やしていた生活から抜け出せ、反省する期間と捉えればデメリットとは思えません。
クレジットカードが使えないデメリットことより、今の借金地獄から抜け出せるメリットのほうが大きいのでは?
私は新しい人生を与えてもらったと感じています。
手元にある現金で堅実に暮らすリハビリ期間と思って、しっかり生活を再建していきましょう。
官報に載る
自己破産するとその事実が、官報に載ります。
官報は政府が発行する新聞のようなものです。
一般人で見ている人はかなり少ないので、官報から自己破産の事実が周囲に知れ渡る可能性は極めて低いでしょう。
財産を手放さないといけない
自己破産手続きは、債権者のために財産を精算して、債権額にあてることも目的としています。
なので、現金はもちろん、不動産や車、高額な資産は処分しなければなりません。
ただし、99万円以下の現金と破産手続き後に取得した財産、差し押さえが禁止されている家具や家電は残せます。
精算できる財産がなければ問題ないでしょう。
車については、価値がない(20万円以下)と判断されれば、乗り続けることができる場合もあります。
処分対象になる財産とは?
- 99万円以上の現金
- 20万円以上の預貯金
- 20万円を超える有価証券・株券・ゴルフ会員権
- 20万円を超える価値のある車
- 20万円を超える受給予定の退職金
- 20万円を超える生命保険の解約返戻金
まとめると、20万円を超えるものは換金され債権者へ公平に分配されます。
家財道具や居住用の敷金などは対象になりません。退職金も160万円以下なら処分なしです。
職業の資格制限を受ける
破産手続きが開始され、免責が確定するまでは、一部の職業に就けなくなります。
免責が下りれば復権しますので、その後は普通にお仕事できます。
破産者が制限される一部の職業
弁護士・公認会計士・税理士・弁理士・公証人・司法書士・行政書士・
不動産鑑定士・社会保険労務士・人事院の人事官・国家公安委員会委員・
公正取引委員会委員・有価証券投資顧問業者・都道府県公安委員会委員・
不動産鑑定士・土地家屋調査士・宅地建物取引業者・検察審査員・古物商・
生命保険募集員・商品取引所委員会・証券会社外務員・質屋・警備業者(警備員)・
建設業・風俗業者・合資会社及び合名会社の社員・株式会社及び有限会社の役員・
代理人・保佐人・成年後見監督人・補助員・遺言執行者・保証人
地方公務員や医師・学校教員などはその資格に影響ありません。
管財事件の場合制限されるもの
一定の財産があり管財事件になる場合、債務者の財産を処分・換金して債権者に公平に配当しなければなりません。
破産者の財産は、破産管財人が管理するため、破産手続き終了までは裁判所の許可なく引っ越しや長期の旅行をすることができません。
また、破産者に郵送された郵便物も破産管財人に配達され、開封されます(破産者も閲覧できる)。
同時廃止の場合は、上記の制限はかかりません。
自己破産で注意したいこと
デメリット以外で注意しておきたいことをまとめました。
保証人がついている借金の場合は、迷惑がかかる
保証人がいる借金の場合、自己破産すれば債務の責任が保証人に移り取り立てが始まります。
つまり、あなたの借金が自己破産でゼロになる代わりにその責任が全て保証人に降りかかってしまうのです。
自己破産の場合、一部の借金だけを返す…ということが認められません。
保証人のついている借金だけ外して、あとは自己破産!というわけにもいかないので、
迷惑をかけたくなければ、他の債務整理方法を選ぶ必要があります。
税金や罰金はゼロにできない
自己破産で免責がおりても、国や自治体に収める税金は無くなりません。
納税は国民の義務ですから、自己破産手続きとは別です。
ちなみに、養育費や交通事故の損害賠償金などもなくならないので
しっかりと責任を果たしましょう。
別れた元夫が自己破産したからといって、子供の扶養義務は無くなりません。養育費はしっかり請求できます。
7年間は自己破産できない
自己破産後、7年間は再び自己破産することができません。
破産申請はできますが、免責許可が下りないので注意してください。
費用がかかる
自己破産手続きは、用意する書類も多く個人でやるには限界があります。
なので、弁護士や司法書士に依頼することになるのですが、当然費用がかかります。
(生活保護者は援助があり費用がかからない場合がある)
ただし、法律事務所によっては分割払いに対応しているところもありますし自己破産以外の借金整理方法で解決できるかもしれません。
過払い金請求で借金が大幅に減額することも考えられます。
「費用がかかるからダメだ」
と自分で判断せず、法律家に相談してみましょう。
自己破産できる人、できない人

自己破産は、債務整理の最終手段!
破産申立ができる条件は、債務不能の状態であることです。
「いくらの借金があれば債務不能となり、自己破産できるのか?」
という質問も多いのですが、借金の額ではなく、財産や収入、年齢、職業、性別など総合的に判断されます。
「このままの生活では借金を完済できない」という債務不能状態であれば、借金額が少なかろうと多かろうと、自己破産を利用できるのです。
例えば、120万円程度の借金でも生活保護を受けていたり、障害や病気で働きに出られないなどの事情があれば免責が認められたケースも過去にあります。
ただ、「ちょっと節約したり頑張れば、支払っていけるけど自己破産して借金をなくしたい!」という場合は、自己破産できません。
免責が認められないケースもある
自己破産では、破産手続をしただけでは借金から解放されません。
免責許可決定を受けてはじめて、借金の支払いを免除されます。
自己破産申請した96%が免責を認められているといいますが、まれに認められないケース(免責不許可事由)もあるのでチェックしておきましょう。
主な免責不許可事由
借金の理由がギャンブルや浪費 | 競馬やパチンコなどギャンブルや買い物・娯楽などの浪費によって借金を重ねていた場合 |
転売行為 | クレジットカードやローンで購入したものをローン返済中に転売したり質入れで現金化する行為 |
財産隠し | 破産手続きで財産を隠したり価値を減少させるなどの行為 |
返済不能を隠して借金 | すでに支払うことができない状態だったことを隠し金銭を借り入れた場合 |
債権者を偽る | 一部の債権者だけ全額返済する、債権者名簿に載せないなど偽った場合。 |
7年以内に免責を得ている | 7年以内に自己破産して免責を得ている場合 |
ギャンブル・浪費が含まれていたら自己破産できないのか?
破産法では、ギャンブルや浪費で借金したことだけでは、免責不許可事由にはなっていません。
あくまでも、著しく財産を減少させ、過大な債務を負った場合です。
過去の例から言っても、裁判所の裁量で免責許可がおりたケースも多々あります。
自己破産は多重債務者を救済するための制度です。
裁判官の裁量で
- 反省の色が見られる
- 今後の生活再建に意欲があり真摯に向き合っている
ことを示すことが大切です。
免責許可をスムーズに得るためには弁護士に相談
債務の中に、麻雀や競馬・パチンコなどのギャンブルや買い物・海外旅行などの浪費が含まれていたとしても自己破産は無理だ…と諦めずに弁護士に相談しましょう。
自己破産は、弁護士に依頼せずに自分で破産申立をすることも可能です。
しかし、自己破産手続きはとても複雑です。
書類や手続き、陳述書に不備があると免責許可を得られない場合も考えられます。
また、借金や生活状況によっては、自己破産が必要なく他の債務整理の方が適している場合もあるので、手続きを自分でするにしても専門家の意見は聞くべきです。
自己破産に関するよくある質問
最後に、自己破産に関する質問をまとめました。
Q.自己破産前に、友人に借りた借金だけ返したいのですが大丈夫でしょうか?
A.自己破産手続きは債権者に不公平がないように、一部の借金だけを返すことは禁止されており免責不許可事由に入ります。
親や友人の借金は、自己破産手続きが終わり免責がおりた後、誠意を持って返していきましょう。
自己破産し、他の借金がなくなることで、返済しやすくなるはずです。
Q.免責不許可になったらどうなるんですか?
仮に免責不許可となった場合、告知を受けて1週間以内に即時抗告すれば高等裁判所で免責の判断を再度受けることができます。
いわゆる不服申し立てです。
それでもダメなら、他の債務整理を検討することになります。
Q.免責不許可になれば債権者からの取り立ては再開される?
債権者により対応は異なります。
実は、免責許可された場合、債権者へ通達が行きますが不許可の場合、債権者へ通達されることはありません。
弁護士に聞かないとわからない状況なので、不許可の事実に気付かない業者が殆どです。
さらに、カード会社や金融業者は破産手続がされた時点で貸倒処理を行い、貸付た金額を損金として計上し処理します。
そうなると免責不許可となっても請求が再開されることはほとんどありません。
(まれに請求が再開された例も聞きますので放置せず弁護士に相談しましょう)
この記事のまとめ
破産はこの世の悪!ってイメージを持つ方も少なくありませんが自己破産は多重債務者を救済するために国が用意した制度です。
会社もクビにならないし、選挙権だって影響ありません。
免責が認められれば借金を払う必要がなくなり、生活を立て直すことできます。
私は生活再建のチャンスを与えてくれた自己破産という制度に本当に感謝しています。
もし、あなたが今借金問題で辛い状況なら、勇気を出してみてください。
もちろんデメリットはあります。
- 7年から10年ブラックリスト入り
- 財産を処分しなければならない
- 官報に載る
しかし、上記のデメリットは債務不能に陥った人にとって、ほとんど影響ないのではないでしょうか。
それより、借金苦で毎日精神と身体をすり減らし未来が見えない状況を続ける方が辛い。
債務不能状態だったら、破産しようとしまいと多重債務でブラック入りです。
ギャンブルや浪費で借金ができた方でも反省と生活再建への意欲を示せば、免責を得られる可能性があります。
必ず弁護士の意見を聞いてから、自己破産へ挑みましょう。